（１）　2005年5月18日、次の内容を朝日新聞に投書した。

（２）　小泉総理や国会議員が靖国神社に参拝して、「戦没者を慰霊して何が悪いか」と開き直る。無知なのか、国民をだまそうとしているかのどちらかで、そこに正義はない。靖国神社は軍人を祀ってあり、戦没者を祀っているわけではないのだから。
　沖縄戦の犠牲者、内地空襲の犠牲者、原爆の犠牲者、敗戦後も満州を中心に襲撃と飢餓と極寒で亡くなった犠牲者などは、軍人よりはるかに数が多いが、靖国参拝はその慰霊をしていない。だから靖国参拝は、戦没者慰霊ではなく、戦争賛美である。首相参拝は、こうした声を強引に押さえつけて実施されてきた。
　小泉首相は、Ａ級戦犯の「罪を憎んで人を憎まず」と語るが、これはまさに騙りだ。そう言うなら、個人の墓を詣でるべきだ。軍人を祀っている靖国を参拝することは、「罪を讃えて人を閑却している」行為であることになぜ気づかない。
　靖国神社を参拝する政治家の無知と騙りが、東アジア諸国との国際関係を危うくしている。戦争を反省しない政治家の瑣末な意地が、日本外交を窮地に陥れている。

（３）　この投書の背景としては、次のことがある。

（４）　2005年４月に、中国で反日デモが高まりを見せた。一時は暴動化し、日本公使館や日本料理店などが被害を受けた。中国政府は、「原因と責任は日本政府にある」と謝罪を拒否したが、被害の原状復帰をはかり、デモの拡大を力で徹底的にねじふせた。５月には沈静化の様相を見せている。

　しかし、警備の強化と集会の禁止によって押さえつけたもので、中国人の心の中に火種は残っている。

（５）　反日デモへの児戯的対抗のように、４月に自民党・民主党の国会議員の一部が靖国神社参拝を強行した。

（６）　小泉首相は、2005年5月16日の衆議院予算委員会で、「日本は戦後60年間、戦争に巻き込まれず、戦争もしていない。戦没者全般に敬意と感謝の念をささげるのがけしからんというのは理由がわからない。軍国主義の美化だととらえるのは心外だ」「どのような追悼の仕方がいいかは他の国が干渉すべきではない。東条英機氏のA級戦犯の話が出るが“罪を憎んで人を憎まず”は中国の孔子の言葉だ。なんら問題があるとは思っていない」と語った。